ダウは、10 年以上にわたって製造業務のデジタル変革を推進してきました。その一環として、プラントメンテナンスのモダナイゼーションに焦点を当て、テキサス州フリーポートの拠点の改革を目指し、試験運用に乗り出しました。
20平方マイル(約51平方キロメートル) の敷地面積内に40の生産工場を擁するダウのフリーポート工場は、西半球最大級の総合化学工業施設です。
各工場には何千もの機械部品があり、その生産とメンテナンスはすべて手作業で行われています。これまでメンテナンスの作業指示を出す際には、コントロールルームのエンジニアが現場に出て、影響を受ける部品を検査し、紙のファイリングシステムから関連するプロセス文書を取り出して、安全分析レポートを書き、現場のオペレーターに渡す必要がありました。
その後、紙の安全分析レポートを現場に持ち帰って、生産やメンテナンスを行います。また、現場のオペレーターは、決まった手順でコントロールルームと連携する必要があるため、資料を手渡しするために何度も往復しなければならず、作業時間が2倍にも及ぶこともありました
また、オペレーターが印刷された工程表を見ながら、部品を検査し、時には遡ったりして、手作業ですべての工程を順番にチェックしていたため、安全上のリスクもありました。どれだけ細心の注意を払っても、ヒューマンエラーのリスクは残されていました。
ダウに34年勤務しているグローバルITイノベーションセンターのディレクター、Clark Dressen氏は、現場のオペレーションチームがより効率的かつ安全に作業できるプロセスを求めていることを理解していました。さらに、この課題の解決がプラントの生産性と信頼性を高めることにつながると確信していました。
「私たちが解決しようとした主要な問題の1つは、運用・保守作業の方法を変え、効率的に情報を現場に届けることでした。現場のプロフェッショナルが手元で情報を見られるような環境を整えることで、働き方、コミュニケーションの仕方、協力の仕方、問題解決の仕方などに影響を与えたいと考えたのです」とClark氏は言います。
「従業員の作業現場に効率的に情報を届けることは、私たちにとって非常に重要な業務改善の機会でした」
「単に新しいツールやテクノロジーを提供するのでなく、それらをプロセスや作業手順、さらに日常業務に組み込むことが重要です」
現場業務のデジタル化にあたり、1つ大きな課題がありました。ダウのような大規模な工場の敷地では一般商用回線が利用できず、何トンもの鉄やコンクリートがいたるところに点在するため、無線ネットワークの構築は難しいのです。
このことから、正しい情報を現場の作業者に伝え、デジタルマニュファクチャリングという大きなビジョンを実現するためには、モバイル接続を行う必要がありました。
「Wi-Fiソリューションの導入も検討しましたが、今回のような広い地域で展開するのは困難です。フリーポートの工場は4つのエリアで構成されており、その中には工場、事業所、作業場所があります。このエリアをすべてカバーするためには、非常に高価で、維持・運用も困難になることが予想されました」とClark氏は述べます。
そこで、ダウの運用・保守チームとキンドリルは、フリーポート拠点全体を安全にカバーできるコスト効率の高いプライベートLTEネットワークの採用を決定しました。そして、その要件をまとめ、自営携帯ネットワークを構築して、ファイアウォールセキュリティを有効にし、セキュリティプロファイルを柔軟に管理するためのコンテナソリューションを作成しました。なお、約12ヵ月という短い期間で実証実験から本番環境への拡張までをすべてこなし、プライベートLTEネットワークを実装しました。
「日々の仕事のやり方を変えるという意味で、運用・保守チームに多くの新しいツールを導入しました。その際、キンドリルは、ダウの社内チームと協力し、セキュリティアーキテクチャーの観点からダウの環境に適合するように支援、提案してくれた、素晴らしいパートナーと言えます」(Clark氏)
デジタルマニュファクチャリングで私が期待していることは、現場の作業員が自らデジタル手順書を開発できるようになることです。拠点の数が多いので、IT部門がすべてのデジタル手順を開発することはできません。そのため、従業員が自らデジタル化できるように支援しています。
引用元
*プラントエンジニアリング加入者のうち、メンテナンス担当を対象に調査。産業用メンテナンスレポート、CFEメディア・アンド・テクノロジー、2021年3月