その時、このデータセンターに全業務を託せないと悟りました
アイアンマントライアスロンを趣味とする傍ら、AIやIoTなどの新しいテクノロジーとレガシーシステムとの統合に心血を注ぐStijn氏は、不測の事態が発生しても慌てずに対処できるような頼りがいのある人物です。また、Stijn氏は、ITチームが多くの困難と不確実性を乗り越えてきたことを知る、一番の理解者でもあります。
データセンターはあらゆるレベルで破綻していました
「当社では、2019年よりデジタルロードマップの展開をスタートしており、ブリュッセルの本社地下にあるデータセンターを移転する計画はその出発点に位置付けられています」とStijn氏は語ります。
カルフールベルギーのオンプレミスシステムはレガシー化が進んでおり、需要の変化に対応するための柔軟性に欠けていたとStijn氏は言います。
これは変革の渦中にある企業による戦いの記録です
IT部門は、日々障害対応とエスカレーションの管理に追われており、ビジネスへのリスクは現実味を帯びていました。一時的にサービスが停止すれば、誤請求や精算の遅れを招くリスクが生じるなど、顧客体験に影響を与えかねません。完全なサービス停止ともなれば、一部の店舗が完全な閉鎖に追い込まれてしまうでしょう。
ちょうどその頃、コアシステムをGoogle Cloud Platform(GCP)に移行する計画が進行中でしたが、完了までには時間がかかってしまいます。週末の危機を回避できたとはいえ、もはや一刻の猶予もないとStijn氏は考えていました。
「危機を回避するためには、新たな計画を早急に打ち出す必要がありました。その計画とは、天候やデータセンターの温度を気にせず、週末に自宅でのんびり過ごせるような、手のかからないITシステムの構築です」とStijn氏は言います。
「これは変革の渦中にある企業による戦いの記録です」とStijn氏は続けます。
「当社の目標は、お客様を笑顔にする体験を提供することです。そのためには、デジタル化を推進し、チャネル間やパートナーとの統合を進める必要があります」(Stijn氏)
Stijn氏とカルフールベルギー 最高情報責任者(CIO) Olivier Luxon氏にとって、最も現実的な解決策 は、ITモダナイゼーションに向けて次のステップに進むための暫定的な環境の構築でした。そこで、必要になったのが、コアワークロードを迅速にリフト&シフトし、拡張性を確保した安全なクラウドデータセンターです。これにより、GCP移行に向けて戦略的にマシンを再プラットフォーム化できると考えました。
Olivier氏の脳裏に浮かんだ選択肢は2つあります。1つは暫定的な環境を自社で構築すること、もう1つは信頼できるパートナーとともに課題を乗り越えることです。
「もちろん、自社ですべてを作り直すこともできますが、データセンターの移行は当社のビジネスの範囲から逸脱してしまいます。当社はデータセンターの専門家ではありません。お客様のために、まだまだやるべきことがあるのです」とOlivier氏は言います。
Stijn氏は、キンドリルに依頼することに何のためらいもなかったと述べます。
「当社では、数年前からキンドリルのサービスを利用しており、キンドリルのメンバーも当社のITシステムについて熟知していたため、信頼できるパートナーとしてキンドリルにデータセンター移行を依頼することにしました。成功が約束されているチームから、わざわざ変える必要はありませんよね」(Stijn氏)
Stijn氏とOlivier氏、そしてキンドリルのチームは、コアシステムをベルギー南部にあるキンドリルのTier3+ ハイブリッドクラウドデータセンターに移行する計画を立てました。そして、 ダウンタイムや業務を停止することなくスピーディに作業が完了し、オンプレミスシステムの完全な移行を実現しました。
それと並行して、店舗システムとそのレガシーアプリケーションをGCPに効率的に移行することで、店舗運営のモダナイズを支援しました。なお、既存環境は各店舗に分散されており、多くの店舗が倉庫などに設置された旧式のPCでアプリケーションが実行されていました。
「これまでは、各店舗に小規模なデータセンターが1つ設置されている状態でした。そのため、より扱いやすく柔軟な店舗用インフラストラクチャーを新たに構築したいと考えていました。これを実現するためには、さまざまなサービス、フィード、プラットフォームを備えた明確な標準カタログを作成するしか手段がありませんでした」とOlivier氏は語っています。
さっそくキンドリルは、Red Hat Ansibleを使用してGCP上にITサービスカタログを構築・運用し、店舗のフランチャイズオーナーがリモートで仮想マシン(VM)をプロビジョニングできるようにしました。店舗全体で同じ仮想マシンを実行することにより、カルフールベルギーは、ビジネスオペレーションの実行に関わるフロントエンドシステムとバックエンドシステムを一貫して効率的に統合。信頼性の高いフレームワークを構築し、顧客と最も直接的に関わるアプリケーションをモダナイズしました。たとえば、在庫や得意先の一元管理により、店舗を問わず同じレベルの顧客体験を提供することができます。
「コードスクリプトに基づいてインフラストラクチャーを構築し、ボタンを押すだけでオンライン店舗にアクセスできるといったオーケストレーションは、当社のオペレーションには欠かせません。また、店舗ごとのコンピューティング環境を中央集権型にシフトすることで、すぐに問題解決に取り組める体制を整えられました。さらに、クラウドならではの弾力性と柔軟性を生かすことで、新しいサービスとより優れた顧客体験の提供が実現しました」とStijn氏は言います。
現在、SAPをはじめとするレガシーな基幹システムのクラウド移行の準備を進めており、既存のレガシーシステムは、キンドリルの管理のもと暫定的なデータセンターインフラストラクチャーによって安全稼働を続けています。
現状、GCP上にはキンドリルが管理する店舗サーバーが700台近くあり、今後は1,000台以上がオンラインにシフトする予定です。なお、GCP移行が完了した店舗は、アプリケーションのモダナイゼーション作業をいつでも行えるようになりました。
「キンドリルとのパートナーシップにおける重要な成功要因の一つは、当社の標準サービスをカタログとして変換できたことだと思います。これにより、任意のタイミングでリクエストでき、数分~数時間以内にカタログ全体のリクエストが開始できるようになります」とStijn氏は語ります。
私たちが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の成功を実感する瞬間は、実店舗・オンライン店舗問わず、すべての顧客体験においてお客様が満足されたときです
カルフールベルギーの変革への取り組みはまだまだ始まったばかりです。
「DXに終わりはありません。今回の移行プロジェクトを機に、ようやくDXの最初の一歩を踏み出しましたが、今後も進化・変化していくことでしょう」とOlivier氏は言います。
それに続けてStijn氏は次のように述べます。
「私たちが、DXの成功を実感する瞬間は、実店舗・オンライン店舗問わず、すべての顧客体験においてお客様が満足されたときです」(Stijn氏)
カルフールグループは、大手食品小売業のパイオニアであり、新鮮なオーガニック食品や地元産の食品を手頃な価格で提供する、モダンでありながら家庭的なスーバーマーケットチェーンを展開しています。
グローバル 321,000人以上
ベルギー 8,300人以上
グローバル 12,225店
ベルギー 788店
グローバル 807.3億ユーロ
ベルギー 42.6億ユーロ