注: 以下は、Harvard Business Review Analytic Servicesのレポートからの抜粋です。
生成AIほど瞬く間にビジネスに採用された技術はこれまでにほぼ例がありません。生成AIは生産性を大幅に向上させ、顧客体験や仕事の本質を劇的に変える可能性を秘めているため、組織の上層部から迅速に対応するようプレッシャーがかかることになります。
しかし、上層部の期待（や懸念）とは裏腹に、生成AIの可能性を戦略に落とし込み実行するロードマップは決して明確なものではありません。生成AIはまだ生まれたばかりの新しい技術です。新技術をうまく使いこなすには、リスクと法規制上の課題があります。人材も十分でなく、確保が難しい場合もあります。加えて、生成AIを使ったイノベーションにかかるコストもすべて明らかにはなっていません。
そして、たとえこれらのハードルを乗り越えることができたとしても、より大きな問題があります。デジタル基盤という観点から、果たして企業は生成AI、そしてより広義のAIに対する備えはできているのでしょうか。言い換えれば、企業は生成AIを最大限に活用するのに必要な技術的インフラストラクチャーと組織カルチャーを築けているのかということです。
この可能性と実用性の厄介な関係に対応する任務を負うのは、多くの場合、最高情報責任者（CIO）です。当然のことながら、多くのCIOは行動を起こさなければという並々ならぬプレッシャーを感じています。シリコンバレーの技術コンサルタント会社であるConstellation Research Inc.の副社長兼プリンシパルアナリスト、Dion Hinchcliffe氏は、このプレッシャーこそが生成AIをそれ以前のあらゆるテクノロジーと異なるものにしていると述べています。
「昨年複数のCIOと話をする中でかなりはっきりしたことは、取締役会がCIOに生成AIのサービスを提供するよう相当なプレッシャーをかけているということです。役員たちは生成AIのニュースを見ていますし、実際に自分たちで使ってもいます。そして、自社のビジネスですぐに生成AIを使って何か意味のあることをしなければ、AIネイティブの会社が彼らよりもはるかに安価で優れた製品やサービスを生み出し、自分たちに取って代わるだろうと考えています。」
こうした競合上の脅威を回避し、「AI Everywhere」となる未来に備えた組織作りをするために、企業は生成AIとそこに関連するデジタルインフラストラクチャーへの多額の投資を計画しています。。マサチューセッツ州ニーダムに本拠を置く調査会社であるInternationalData Corporation（IDC）は、生成AIソフトウェアや関連のインフラストラクチャー、ITサービスへの世界的な支出は2023年から2027年の間に年平均73.3%の成長率となり、今後、推定1,430億ドルに達すると予測しています。1
しかし、資金を投資するだけでは、生成AIおよびより広義のAIに備えるために必要なデジタル基盤を構築することはできません。10年以上にわたるデジタル変革の経緯を振り返ると、多くの企業が技術革新を確約するうえで、いまだに人材、企業カルチャー、運用モデルに関する課題が立ちはだかっていることが分かります。
このレポートでは、企業がどのようにして戦略、イノベーション、運営の中心にテクノロジーを据えるために必要なデジタル基盤を構築し、「AI Everywhere」になる未来に備えていくべきかを探ります。このデジタル基盤には、技術的インフラストラクチャーとビジネスカルチャーの両方が含まれ、この2つの要素によって企業が生成AIを導入できるスピードが決まります。
1GenAI Implementation Market Outlook: Worldwide Core IT Spending for Gen AI Forecast, 2023-2027、International Data Corporation、2023年10月。
