より多くの価値を引き出すメインフレームへの投資のハイブリッドアプローチ
Jonathan Ingram, Richard Baird著
銀行および金融サービス業界の経営層は現在、「この永続的なテクノロジー (メインフレーム) の銀行業界における未来はどうなるのか、私たちに必要なデジタル変革に寄与できるものなのか」という共通の議題を自問しています。
今日でもメインフレームは金融サービスプロバイダー (大小を問わず) のセキュリティとレジリエンシーにとって依然として不可欠であり、世界で最も堅牢な金融システム基盤として機能し続けています。 そのため、クラウドベースのアプリケーションや、銀行事業のあり方に革命をもたらすようなその他の新技術の重要性と同様にメインフレームに関する議論の重要性も高くなっています。
企業の多くは、自社が転換点に立っていることを認識しており、将来の展望を見据える銀行にとっても、行動を起こす期は熟しています。過去のメインフレーム投資を無駄にせず、将来の機会に備えるため、ビジネスリーダーはいつ、何を、どのようにモダナイズするかを判断する必要があります。
過去のメインフレーム投資を無駄にせず、将来の機会に備えるため、ビジネスリーダーはいつ、何を、どのようにモダナイズするかを判断する必要があります。
成功とは具体的にどのようなものか
大半のメインフレームモダナイゼーションの目標は、新手法に対する自由を確保しつつ、アジリティを向上させ、新規市場への迅速な参入を可能にすることで、新規顧客を惹き付けて、エコシステムを迅速に形成するという比較的シンプルなものです。こうした行程に着手するにあたり、テクノロジーによって定義されたゴールラインに全力で向かう傾向が見られます。これではビジネスのアジリティ向上という当初の目的を曇らせてしまいます。
メインフレームモダナイゼーションとは、すべてのワークロードをクラウドに移行することと同義語であるという、誤った考えが世間一般に蔓延し、問題を生んでいます。Gartner®は2021年のレポートの中で、コスト最適化計画をほとんど、あるいはまったく持たずにクラウド投資を急いだ企業は、期待した価値を生み出せていないだけでなく、最終的にはこれらのサービスに最大70%の過剰支出を行っていると報告しました。1
自信を持って前進するために、私たちは銀行業界のリーダーがメインフレームモダナイゼーションを新たな視点から再評価することが重要だと考えています。メインフレームモダナイゼーションのような変革は、全体的なITランドスケープだけではなく、個々の企業文化、問題点、ユースケースが関係してきます。最初の課題は、メインフレームと他のプラットフォームの統合、メインフレーム上でのモダナイゼーション、またはメインフレームからの移行において、各企業の人材、運用、ワークロードにとって最適の組み合わせを見つけることです。
私たちは多様な規模のお客様が共通の問いを自問しているのを毎日のように目にしています。
- 30年以上にわたりメインフレーム技術に投資しており、ビジネスの中核を成す多くのデータやビジネス、アプリケーションロジックが存在している。ビジネスを前に進めるため、メインフレーム上のデータとロジックを使用し続けながら、モダナイズするにはどうすればよいのか。
- 自社のメインフレーム技術に追加投資するべきなのか、そうである場合、なぜ、どの技術を使用すべきか。
- メインフレーム上のデータとロジックをクラウドで安全に利用可能にするにはどうすればよいのか。どのアプリケーションとデータをクラウドに移行すべきか。どう判断すればよいのか。
- ビジネスのレジリエンスと高セキュリティ環境を損なうことなく、メインフレームをモダナイズするにはどうすればよいのか。
お客様のメインフレームモダナイゼーションを手助けするため、キンドリルが頻繁に共有する4つの基本事項を紹介します。
1. ハイブリッドアプローチを採用する
メインフレーム・モダナイゼーション・ジャーニーの最初の基本ステップは、自社の現在のアプリケーションおよびデータの状況を通して、以下の問いに対する答えを見つけることです。
お使いのメインフレームのどこに投資するか、どこを切り捨てるか、またはどこを維持することが、最も価値を生み出すのか。
どのアプリケーションがメインフレームに留めるのに適しているか、そしてどのアプリケーションがクラウド環境に移行するのに適しているか。
そして最後に、運用、ビジネス上のニーズを満たす上で、これらのアプローチをどのように組み合わせるのが最善なのか。
この問いに答えるプロセスこそがハイブリッドアプローチです。
ここでの目標は、どのワークロードがどのプラットフォームで最も機能するかを判断することです。
言い換えれば、正しいワークロードのために正しいプラットフォームを見つけることがすべてです。
ここでの目標は、どのワークロードがどのプラットフォームで最も機能するかを判断することです。 言い換えれば、正しいワークロードのために正しいプラットフォームを見つけることがすべてです。
特に、メインフレーム・モダナイゼーション・ジャーニーの初期段階において、ハイブリッドアプローチを採用すると、メインフレームの安定性、信頼性、セキュリティを引き続き活用しながら、クラウド統合によるメリットを得ることができます。メインフレームからの完全な移行 (こうした取り組みには何年も要する場合がある) とは異なり、ハイブリッドアプローチは即座にビジネスへの影響を生み出しながら、リスク、サービス停止、不必要な支出を最小限に抑える柔軟性を企業にもたらします。
2. (既存の)データを活用する
まだ十分に議論されていませんが、もう1つの重要な基本要素は、IBM zOS Connect、Amazon API Gateway、Google Apigee、またはAzure Logic App Connectorsなどのツールを使用した、APIを介したアプリケーションとデータの公開です。
アプリケーションとデータを包括的かつ安全に公開することのビジネス価値は、過小評価できません。
特に長年にわたり使用されてきたメインフレーム上のさまざまなデータソースとテクノロジーの数を考慮するとその重要性は高まります。
高度な分析から不正検出やAIに至るまで、データを新しい革新的な方法で利用可能にすることは、重要な前進の一歩であり、企業はこれを躊躇すべきではありません。
このステップを実行することで、ビジネスの成果と顧客のインサイトが向上するだけでなく、機械学習機能やより良いレポート作成機能、さらにはローコードまたはノーコードアプリケーション作成などの新たな機能をチームに提供します。
3. 開発チームへの投資
最新のプログラミング言語の活用は、私たちを次の基本的なポイントへと導きます。COBOL、PL/I、CICS、IMSなどの古い言語やテクノロジーに精通した開発人材はますます少なくなってきています。
若い開発者はこれら古い言語の代わりに、Java、Python、Springなどの関連製品に精通した人員として市場に参入しています。
私たちは、銀行はこうしたアプリケーション開発人材に関する課題を、新たなハイブリッド環境を監視、管理、構築するために必要なスキルセットに投資する契機として捉えるべきだと考えています。
たとえば、既存のJavaプログラマーにIMSスキル習得を促すことで、Springアプリケーションと同様にJavaで新規のIMSアプリケーションを書くことが可能になります。
これらのスキルギャップを埋めるためにパートナーと連携するか、あるいは独自のロードマップを確立して新規人材を確保するかに関わらず、メインフレームモダナイゼーションは今後もデジタル戦略のみならず、人員関連の戦略であり続けます。
銀行はこうしたアプリケーション開発人材に関する課題を、新たなハイブリッド環境を監視、管理、構築するために必要なスキルセットに投資する契機として捉えるべきです。
こうしたスキルのリノベーションは、メインフレームの革新的な使用法にもつながる場合があります。例えば、最新のメインフレームテクノロジーを用いることで、AIソリューションをメインフレーム上で構築・実行することが可能になりました。これにより、AIコンポーネントを外部で実行する必要がなくなり、必要なAI機能をすべてのメインフレームワークロードに対して実行できるようになります。
4. 積極的な変革を受け入れる
最後に、おそらく最も重要なこととして、メインフレームモダナイゼーションのジャーニーは、積極的な変革に基づいたものである必要があります。このプロセスは、常に評価と再評価を行う必要があります。自社のビジネスにとってメインフレームを軸にすることが最適なのか、メインフレームなしで進化することが最適なのか、またチームが成功のための必要なステップをどのように取るのかなどが対象となります。必要なステップとはハイブリッドアプローチを採用すること、アプリケーションとデータを活用すること、アプリケーション開発および生産に携わる人材に投資すること、積極的な変革を受け入れることなどのことです。
このジャーニーは、一晩で何かが変わるようなものではありません。
今日、明日、そして今後何年にもわたって価値をもたらす一連のソリューションを、ビジネスのニーズに応じて見つけ出す旅なのです。
Jonathan Ingramは、キンドリルのABN AMRO兼キンドリルジャパンの副社長です。
Richard Bairdは、キンドリルのメインフレーム担当バイスプレジデント兼CTOです。
1. “Realize Cost Savings after Migrating to the Cloud.” Gartner, 28 April 2021
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