組織拡大に伴い、事業全体のコストが不透明に
インドでは、道路建設や橋梁建設などの大規模インフラプロジェクトが国の発展を支えており、エンジニアリング業界や建設業界に数百万ドルの利益をもたらしています。
それに伴い、ディリップビルドコンも急成長を続けており、今では35,000人以上の従業員を抱え、年間40件以上の大規模プロジェクトを手がける国内有数の大企業になっています。また、この勢いを維持するために、大規模インフラプロジェクトの案件数増加を目指していました。同社のゼネラルマネージャーであるDevendra Goyal氏は、次のように説明します。
「インドでは、インフラプロジェクトに注目が集まっていますが、この分野に投資することは、ビジネスチャンスであるのと同時に課題を抱えることにもなります。なぜなら原材料、燃料などにかかるコストが、年間売上高の50%を占めることもあるからです。今後多くの大型プロジェクトを同時並行で進めるためには、運転資金を効率的にコントロールする必要があります」(Devendra Goyal氏)
これまで同社ではインド全土で事業を展開していましたが、従来のプロセスは手作業をベースにしており、勘や経験といった暗黙知に依存し、その手法もサイロ化していました。そのため、事業全体の資産、負債、資本を正確に把握するのが難しく、流動性リスクも高まっていました。
費用対効果の高い原材料を調達する際にも課題がありました。これまで同社では、サプライヤーとのやり取りや関係性を正確に把握していなかったため、契約交渉や資材購入においてコスト効率の高いアプローチを見出せずにいました。事業全体の原材料が把握できていなければ、未使用の在庫を各拠点に振り分けられないため、ビジネスチャンスを失いかねない状況でした。
「事業全体のコストを一元管理できなければ、ビジネスの拡大に伴い、大きなリスクが発生してしまいます。この課題を解決するために、標準化・統合化されたビジネスプロセスを構築することにしました」(Devendra Goyal氏)
ビッグデータ活用を想定したERPプラットフォームを構築
ディリップビルドコンでは、各部門の働き方をサポートするために、インテリジェントかつ自動化されたERPプラットフォーム「SAP S/4HANA」を採用しました。
なお、SAP S/4HANAソリューションには、ビジネスインテリジェンス、財務や管理、人事、資材管理など様々な機能が搭載されており、単一のプラットフォームでエンド・ツー・エンドのビジネスプロセスを管理できるようになります。また、SAP Business Objects Business Intelligence Suiteと連携させることで、業務に役立つインサイトをボタン1つで正確かつタイムリーに獲得できます。
同社 IT部門の責任者であるSandeep Pote氏は、「資本集約型のプロジェクトが増えるにつれ、リスクの管理が難しくなります。この課題を解決するためには、信頼性の高いデータにすばやくアクセスし、それに基づいて行動するデータドリブンな手法が求められます。SAP S/4HANAは、ビッグデータ活用を前提に設計されているため、採用することにしました」と選定の理由を振り返ります。
また同社では、ITインフラへの多額の先行投資を避けるために、キンドリルのフル・マネージド・ソリューションであるApplications Management for SAP Solutions on IBM Cloudを導入。これにより、大規模なインフラチームを編成する必要がなくなり、DX推進に向けた業務に人材リソースを集中させられるようになりました。
キンドリルの深い専門知識と優れたSI能力を評価
ディリップビルドコンは、デジタル・ビジネス・プロセスを作成し、新しいワークフローをサポートするSAPアプリケーションを開発するために、キンドリルとチームを結成。キンドリルが提唱するAscend手法を採用し、設計、開発、テスト、検証といった一連のプロセスを通じて、DXの実現を目指しました。
さっそく同社では、デザイン思考、アジャイル、DevOpsといったベストプラクティスでの開発手法を採用し、SAP管理ダッシュボードなどの主要なSAPアプリケーションを開発。これにより、ソリューションの展開スピードが最大50%高速化しました。なお、35,000人規模のSAP S/4HANAソリューション導入は、インドでも最大規模の事例です。
「SAP S/4HANAソリューションの導入を通して、キンドリルが持つ専門知識に対する高い理解力と優れたSI能力に、強く感銘を受けました。SAP S/4HANAの導入は複雑で、大規模なカスタマイズが必要でしたが、キンドリルがプロジェクトの各段階で的確にサポートしてくれました。特に、今回のDXプロジェクトにおいて非常に重要な位置付けである、チェンジマネジメントとスキル共有の領域へのサポートは大変すばらしいものでした」(Sandeep Pote氏)
同社 エグゼクティブディレクター兼CEOのDevendra Jain氏は、次のように続けます。
「約2年半前に、SAP S/4HANAを起点としたビジネス変革に踏み切れたことは、当社にとっても最良の判断でした。SAP S/4HANAの導入以来、キンドリルは当社のビジネスに絶対に欠かせない信頼できるパートナーになっています。キンドリルは、DXプロジェクトの各プロセスで最適な技術や専門知識を提供するとともに、当社の関係者と連携して開発を進めてくれるなど、良き伴走者としてDXプロジェクトをともに歩んでくれました。当社のDXプロジェクトは、インド国内でも業界最大規模です。特に、契約・請求業務、人事・生産部門、SAP S/4HANAソリューションの資産管理、燃料の調達、プロジェクト管理が活用されています。また個人的にではありますが、SAP管理ダッシュボードがデータドリブンな意思決定に役立っています。当社が最も得意とする分野にテクノロジーを導入できたのはもちろん、最高のグローバルプレーヤーであるキンドリルやSAPと連携できたことは我々にとって大きな誇りです」(Devendra Jain氏)
インド経済の発展を担う成長基盤を構築
SAP S/4HANA on IBM Cloudによる統合ビジネスプロセスを採用して以来、ディリップビルドコンは、インド全域にわたる業務領域においてかつてない可視性を獲得しました。これにより、費用対効果の向上と急成長に伴うビジネスリスクの軽減を実現しました。
「SAP S/4HANAの導入により、当社の働き方が根本的に変わりました。全社規模で資産と在庫を正確かつタイムリーに把握できるようになったことで、より高い精度で原材料と予備在庫の必要量予測が可能になり、最適な在庫レベルの維持が実現しました。また、予測精度の向上により、運転資金が5%削減され、インフラプロジェクトへの追加投資が可能になりました」(Devendra Goyal氏)
続けて、同社 事業開発責任者のKaran Suryavanshi氏は、次のように述べました。
「キンドリルとSAPの連携による DXプロジェクトは、大変険しい道のりになることがわかっていましたが、導入によって得られる付加価値は計り知れません。現在では、運用がより合理化され、アクティビティーレベルでオペレーションの可視性が強化されました。より素早いビジネスの拡張・拡大が可能となり、当社にとっても非常に重要なプロジェクトになりました。また、全従業員が目標達成に向けて自信を持って業務を遂行するようになりました。ソリューション選定時はSAP S/4HANAしか選択肢がありませんでしたが、今では、この製品以外導入が考えられないと思っています。キンドリルは信頼できるアドバイザーであり、組織内の全関係者と連携し、DXプロジェクトを成功に導いてくれました。今後も、DX実現に向けたジャーニーをともに歩み、さらなるビジネス価値の向上を目指していきます」(Karan Suryavanshi氏)
最後にDevendra Goyal氏は以下のように述べています。
「国家規模であった今回のインフラプロジェクトは、インド経済発展の原動力になっています。キンドリルとSAPソリューションにより業務効率化が実現し、これまで以上に多くの建設プロジェクトを受注できるようになりました。これからも当社は、インドの将来を担う重要な役割を果たし続けることでしょう」(Devendra Goyal氏)
2021年10月