トルコ国民にとって必要なイシュバンク
イシュバンクは、トルコ初となる当座預金の開設、ATMの設置、モバイル端末向けのバンキングアプリケーションを提供した銀行です。95年前に設立されて以来、金融サービスに変革をもたらす企業としてその評判を獲得してきました。今日、同銀行はトルコの経済と密接に結び付いており、2,000万人を超える顧客が日常的にサービスを利用しています。
しかし、トルコの経済成長に合わせて規模を拡大した同銀行は、大規模なサービス障害を経験することになりました。2013年にはシステム全体のコンピューターネットワークに障害が発生し、バンキングサービスを16時間にわたって停止せざるを得ない状況に陥ったのです。障害の原因を突き止めて解決した後、IT部門は、より柔軟かつ迅速に変化に対応できるITインフラストラクチャーの導入が最優先事項であることを痛感しました。
同銀行の経営陣が設定した目標を達成するには、競争の激化や厳しい規制の中での取引に対応でき、なおかつ新しいアプリケーションやテクノロジーを導入可能な、より高度なレジリエンシーを備えたデータセンターの構築が不可欠でした。シームレスなカスタマーエクスペリエンスをサポートするだけではなく、停電やサイバー攻撃、人災もしくは自然災害などの予測不能な事態が発生した場合でも、事業を継続させられることが新データセンターに求められたのです。
イシュバンクの最高技術責任者(CTO)であるSabri Gökmenler氏は、キンドリルに依頼することになった経緯を以下のように説明します。
「当行には、ダウンタイムを最小限に抑え、なおかつデータを損失することなくデータセンターへの移行を実現できるパートナーが必要でした。キンドリルは、この条件をクリアした数少ないベンダーの1つでした。キンドリルに依頼した最大の決め手は、テクノロジーの進化にも対応し得るレジリエンシー強化の経験があったことです」
ITインフラストラクチャーの強化
包括的なデータセンター移行プロジェクトである「Project Atlas」に着手する前に、イシュバンクは3つの目標を掲げました。
• レジリエントなITインフラストラクチャーとデータセンターを構築し、事業継続のリスクを最小限に抑える
• ITアーキテクチャーの変革で、サービスを市場に投入するまでの時間を短縮する
• データ基盤を確立し、信頼に値する情報源を一元管理する
同銀行のIT管理部門がこのプロジェクトの進行を管理できるように、キンドリルは15カ国から100人以上の専門家を招集してチームを編成してサポート体制を整えました。キンドリル独自の手法に従い、同銀行の事業部はステークホルダーとして積極的にプロジェクトに参画しました。また、IT管理部門とキンドリルのチームは、クリティカルなポイントを特定して事前に予防措置を講じることで、移行におけるリスクを最小限に抑えることに成功したのです。
また、同銀行は、IT環境を画像で確認できるキンドリルの「Analytics for Logical Dependency Mapping(ALDM)」サービスを利用しました。同サービスはIT環境の自動可視化機能を搭載しており、マルチレベルのサーバーの依存関係を明確にします。また、プラットフォームに生じている異常を検出したり、インフラストラクチャーの全体像を把握したりすることにも役立つものです。
ハイレベルな移行計画を立てた後は、今回のプロジェクトを管理するセンターがプロセスの各ステップを管理しました。2~3週間ごとにそれぞれのグループがProject Atlasにおいて担っているフェーズを実行。各チームは、業務に支障を来さないように夜間や週末に作業しました。移行作業は新しいデータセンターの建設と並行して進められ、同銀行の通常業務に大きな支障を来すことなく、9カ月で完了しました。
「Infrastructure Scale-Out Award」受賞
Project Atlasの完了後、イシュバンクは6,000台を超えるサーバー、750のアプリケーション、4PBのデータを新しいデータセンターに移行しました。イスタンブールから約65キロ離れた都市ゲブゼにあるデータセンターへの移行作業をスケジュールどおりに遂行するために、スタッフは80万時間を費やしました。
38,500平方メートルにも及ぶ大規模なデータセンターには、予備のデュアル電源サーバー、ストレージ、ネットワークリンク、冷却装置が完備されており、トルコ初のティア4データセンターとして話題になりました。さらに2017年12月に、同データセンターは「DCD Magazine」の「Infrastructure Scale-Out Award」を受賞しています。
綿密に計画されたこのプロジェクトでは、ダウンタイムは最低限に抑えられ、データの損失も発生していません。さらに、システムのエンド・ツー・エンドの可用性は99.93%から99.97%に向上し、新しいデータセンターを建築したメリットを改めて示すこととなりました。
他にもセキュリティーやレジリエンシー、信頼性が強化され、同銀行の業務は円滑に進むようになりました。同銀行は、次に推進する「クラウド・コンピューティング・ジャーニー」のプラットフォームの構築にも新データセンターを活用する予定だと言います。
「キンドリルとのパートナーシップで培われた関係によって、新しいデータセンターで最長の稼働時間を実現できました。このデータセンターは当行を今後20年にわたってサポートすることになるでしょう。データセンターの構築は、当行がデジタル化に向けて準備を進める上で非常に重要な役割を果たしました」(Gökmenler氏)
2021年10月