建物はデジタルで進化する

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データドリブンで建物の価値を高める

150年にわたり受け継いできた
チャレンジ精神で
スマートビルディングという
新たな価値の創出へ

大成建設が挑む 人がいきいきとするためのDX

大手総合建設会社の大成建設は2023年に創業150周年を迎えました。長い歴史の中で、失敗を恐れず果敢に挑戦するチャレンジ精神により「富士山頂レーダー基地(富士山測候所)」やヨーロッパとアジアを結ぶトルコの「ボスポラス海峡横断鉄道トンネル」など、歴史に残るプロジェクトも少なくありません。

 

そして、同社にいま期待されているのが、デジタル技術を活用した「スマートビルディング」の実現です。昨今の経済・社会のデジタル化、新型コロナウイルス禍などを背景に、人々の建物へのニーズ・要求・訴求価値も大きく様変わりしており、いまこそ建物の価値提供のあり方を転換する時代に差し掛かっていると同社 ソリューション営業本部 AI・IoTビジネス推進部長 上田 俊彦氏は説明します。

 

「コロナ禍といったパンデミックを経てテレワークが普及する中で、改めてオフィスの存在価値が再考されています。これからのオフィスビルに求められるのは、リアルでの活動をより効率的にするためのサポートを提供できる高いユーザー体験の創出です。オフィスに行きたくてしかたない、そんな気持ちにさせる空間を提供する上でもデジタル技術が欠かせないと考えています」

 

さらに、先進国を中心とした人口減少による労働人材の不足は、典型的な労働集約の産業である建物の維持管理ビジネスの大きな課題となっています。もし省人化や業務効率化などのDX(業務改善・変革)が行われない場合、建物・施設などの社会インフラを維持できなくなるなどの重大な社会的問題になりつつあります。また、脱炭素化に向けた取り組みとしても、ビルのスマート化が求められています。

大成建設では、スマートビルディングにおいて基礎となるデータドリブンの仕組みを実現するため、まずはITシステムのプラットフォーム構築に着手しました。ただし、ITをなりわいとする企業ではなく、すでに業界内で成功事例が生まれているわけでもありません。そこでグループ理念「人がいきいきとする環境を創造する」を念頭にあるべきシステムの構想を膨らましたと上田氏は振り返ります。

 

「当初、大成建設の理想を実現するためのサービスを構想していたのですが、それでは個別最適になりがちで、スマートビルディング同士がつながり、スマートシティともつながって、人が住まうための基盤となることができません。求められているのは大成建設独自の技術ではなく、ビルを利用するお客様にとっての利便性なのです」

 

「ゼネコン」と呼ばれる総合建設業には、独自に開発した技術があり強みとなっていますが、本来の役割は工事を請け負ってマネジメントやコーディネートを行うことです。その舞台がITに変わるのだと考え、さまざまなITベンダーのアプリケーションを選び、組み合わせてカスタマイズし、プラットフォームに乗せてデータの価値を高めていくという方向性を見いだしました。

 

プラットフォームは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「デジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)」が標準化を進めているスマートビルガイドラインに準じてビルOSを開発・改善を進め、その上に、拡張領域である独自の機能を載せるイメージを描きました。

求められているのは、ビルを利用するお客様にとっての利便性です。大成建設の理想を実現する個別最適のサービスではなく、スマートビルディング同士やスマートシティともつながって、人が住まうための基盤となることを目指しました。

大成建設株式会社 ソリューション営業本部 AI・IoTビジネス推進部長  上田 俊彦 氏
The passenger lift shaft seen from the glass cabin, a glazed roof at the top.

スマートビルディング市場の創出を
“運用”でリードする

しかし、大成建設社内に建築系や土木系人材は豊富であるものの、このスマート化の取り組みを進めるのに必要なITの知見が足りません。そこでIT人材の採用を加速しつつ、ステップバイステップでシステムを立ち上げていきました。

 

こうしてできあがったのが、クラウドをベースにBIMとIoTを融合させて建物のデジタルツインを構築し、多種多様な運用管理データを収集・統合管理するプラットフォームである「LifeCycleOS(LCOS)」と、クラウドを利用した建物ライフサイクル管理サービス「LifeCycle Management Console(LCMC)」でした。クラウドプラットフォームはMicrosoft Azureを選定し、外部の力も借りながら構築を進めていきました。

 

一方で、スマートビルディングという新しいマーケットの創出をリードするためには、システムやサービスを立ち上げるだけでは十分ではないと考えました。着目したのが「運用」です。

 

「例えば、ユーザー体験を高めるには、ヘルプデスクを提供しなければサービスは成り立ちません。また、途切れることなく安定したサービスを提供し続けることが不可欠です。さらに、大切なデータを預かる以上、セキュリティを担保することも重要です。ビルオーナーに対してサービスを提案するときにも、運用の品質が選ばれる理由になるはずです。大成建設がマーケットをリードできるかどうかは、運用が左右するだろうという意見は、参画するIT業界の出身者たちとも一致しました」(上田氏)

ビルオーナーに対してサービスを提案するときにも、運用の品質が選ばれる理由になるはずです。大成建設がマーケットをリードできるかどうかは、運用が左右するだろうという意見は、参画するIT業界の出身者たちとも一致しました。

大成建設株式会社  ソリューション営業本部 AI・IoTビジネス推進部長 上田 俊彦 氏
Two business people standing in the lobby of an office looking at a tablet while people are walking past in a blur

スマートビルディングの進化に
伴走できるパートナーを求めて

ところが、運用のための体制を自社で構築するのは現実的でありません。また、外部に丸投げしてしまったのでは、改善を繰り返しながらスマートビルディングを進化させることが難しくなります。顧客に提案を歓迎してもらうには、将来性も示しながら「“建物のかかりつけ医”として責任を持って、大成建設が提供し、運用を支援します」と胸を張って説明できなければならないと上田氏は考えました。

我々ゼネコンの立場にも立ち、お客様のお客様を視野に入れて、長期にわたり親身になってサポートしていただける存在が必要です。サービスの拡大を見越して、運用にとどまらず全領域で支援が可能な実績あるパートナーを探していました。

大成建設株式会社  ソリューション営業本部 AI・IoTビジネス推進部長 上田 俊彦 氏
Businessmen team, group Walking up the stairs in the downtown area Full of tall buildings, to business concept.

スマートビルディングのさらなる価値創出を見越して、運用にとどまらず全領域で支援が可能なパートナー企業を検討する中で、上田氏がIT業界出身のチームメンバーから強く推奨されたのが、キンドリルでした。

 

データセンター運営を含む、グローバルにわたる超大型・大規模なシステム運用に関する知見のほか、セキュリティやクラウド基盤の設計・運用・監視の実績、ユーザーからの問い合わせに応えるヘルプデスクの提供、さらには最新の自動化技術やAI、データサイエンスの知見まで、大成建設が求める要素をすべて備えていたことが理由です。

 

キンドリルはFortune Global 100に名を連ねる企業のうち50%以上の企業を支援してきた実績があります。グローバルのさまざまな企業が必要とするシステムのデザインから構築、運用までを実行できる豊富な専門知識を備え、複雑かつミッションクリティカルな高度なシステムを30 年以上手掛け、多くの企業を支えてきました。

 

キンドリルのインダストリー統括 製造事業本部長 塩見寛行は、「私たちは目先のプロジェクトだけを考えるのではなく、ビルと同じように30年40年と長期的に価値を生み出したいと願っています。その道のりをお客様と歩むために、事業を深く理解して、お客様の先にいらっしゃるお客様まで視野に入れてサービスをご提供してきた自負があります」と語ります。

 

こうしてキンドリルでは、スマートビルディングは継続的に進化していくものであるという点を考慮し、アジャイルでの運用設計、将来を描ける経験豊富で引き出しの多いエンジニアの参画、データサイエンスの活用支援といった幅広いケイパビリティを活かしたうえで、実装へと進めていきました。

「建物から新しい価値を創出する」

データドリブンの基盤が整う

現在までにキンドリルでは、Microsoft Azureでの運用設計からプロジェクトに参画し、その運用の一部も担っています。また、LCOSをさらに良くするための改修にも携わりました。

 

現在、大成建設では、横浜支店や関⻄⽀店など国内3拠点においてLCMCを自社で活用 することに加え、2024年今春からは顧客の工場での実証を開始する予定です。現時点では建物や設備の遠隔監視、データ収集・蓄積、スマートキーやIoTセンサーによる可視化などを実現しています。これにより、例えば室温を計測して空調設備の稼働をコントロールし、エネルギー消費を抑えることも容易になります。脱炭素の実現という社会の要請にも貢献するものです。

 

キンドリルとしては、上記を実現するために欠かせないシステム運用体制の整備やデータ分析のためのUI開発・分析基盤の構築など幅広く領域で支援してきました。

 

大成建設のこの取り組みにおいて特筆するべきが、建物や設備管理はスマートフォンアプリ上でも行える仕組みを構築していることです。建物の管理者は、これによって働き方を大きく変革できる可能性を秘めています。例えば、今後もし地震発生時にエレベーターが停止してしまっても、状況確認のために50階にある機械室まで階段で往復することもなくなるでしょう。

 

「我が国で提唱しているSociety5.0をスマートビルディングでけん引したいと思っています。本格的な活用はまだこれからですが、どのような価値を届けられるかを考えるとき大切なのは、人に対して何ができるかという原点に立つことです。デジタルは人と人を、人と地域を、地域と地域を、そして地域と世界をつなげていくために欠かせない技術であり、大成建設はその一翼を担いたいと考えています」(上田氏)

 

これに対して塩見は、「特定ベンダーの製品に依存せず人中心のビジネスを展開するキンドリルだからこそ、同じ価値観を共有するパートナーとして、ともにスマート化を実現していきたい」と語り、さらにこう続けます。

 

「今後スマートビルディングというキーワードが一般的になり、ニーズが増え始めてから事業を開始していたのではタイムリーな対応が難しいため、先を見越して準備を整えておかなければなりません。世の中にはデータドリブンとの相性がよい優れたサービスが多く存在していますので、エコシステムを通じて最適なサービスを取り入れながらビルの価値向上や利用者のサービス向上を実現するための活動を加速させていきます」

我が国で提唱しているSociety5.0をスマートビルディングでけん引したいと思っています。そのためにどのような価値を届けられるかを考えるとき大切なのは、人に対して何ができるかという原点に立つことです。

大成建設株式会社  ソリューション営業本部 AI・IoTビジネス推進部長 上田 俊彦 氏
tokyo city skyline

 

大成建設株式会社

大成建設は、150年にわたる長い歴史の中で、社会の変化とともにさまざまな大型プロジェクトを手がけ、国内外において社会資本の整備や国土強靭化に貢献することで、建設業としての社会的責任を果たしてきました。グループ理念「人がいきいきとする環境を創造する」を追求し、次世代の夢と希望に溢れた社会づくりに取り組んでいます。

リーダーシップ

Ueda headshot

上田 俊彦 氏

大成建設株式会社 ソリューション営業本部 AI・IoTビジネス推進部長
Shiomi headshot

塩見 寛行

キンドリルジャパン インダストリー統括 製造事業本部長

キンドリルのスマートビルディングソリューションの詳細をぜひご覧ください。

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