ビジネスの持続可能性を高めるとともに価値創造に貢献するためには、システムが効率性・柔軟性・即応性を備えると同時に、安全・安心・安定に稼動する必要があります。そこでマツダでは、将来に向けてレガシーシステムのモダナイズを決断しました。MDI&IT本部 インフラシステム部 シニア・スペシャリスト 助川 裕一氏は当時の課題をこう振り返ります。
「通常のバックアップソフトウェアを用いた場合、データそのものの遠隔地保管には対応しているものの、マツダの考えるDRの基準である、遠隔地でIPやアプリケーションに手を加えることなく稼働させることの実現が困難でした。DRの観点では、管理サーバーのあるメインサイトも被災しているため、メインサイトにある管理用サーバーと同等の機能とデータを持つサーバーをDRサイトでも稼働させ続ける必要がありました。この要求に対して、近年のシステムの需要の高まりから、かつてのように計画的に停止してデータをコピーする時間を確保することは容易ではありません。運用で疲弊しないようなインフラ環境であることが求められており、データ保護や復元の対応力を確保・強化することが喫緊の経営課題の1つとなっていました。」
マツダでは、これまでサーバー層、ネットワーク層、ストレージ層からなる3層のVMware仮想化基盤を採用していました。しかし、今後を見据えると、特定のストレージ製品に依存しないITインフラを構成可能とできる、ストレージ領域にも仮想化基盤を拡大した仕組みへと刷新することを目指しました。
こうしてマツダでは、クラウド環境の併用や連携も意識しながら、ビジネスレジリエンシーを高めるためのモダナイズプロジェクトが始動。さらに2023年にかけて、ディザスタリカバリー(DR)とサイバーリカバリー(CR)の強化に取り組む計画を立てました。
DRの観点では、運用で疲弊しないようなインフラ環境であることが求められており、データ保護や復元の対応力を確保・強化することが喫緊の経営課題の1つとなっていました。
特定の製品の販売を生業としない真のベンダーフリーであるキンドリルに支援を依頼しました。私たちが事前に想定しきれなかった課題も管理しながらサポートもらえたおかげでプロジェクトをうまく進めることができました。
サーバー移行に続くDRおよびCRの強化では、DR環境を増築し、CRの一環として安定稼動するアプリケーションのバックアップをクラウドに隔離しました。また、新しい環境に対応するデータバックアップとレプリケーションおよびリストア体制を整備するため、
Veeam Software社製品を導入しました。グローバルでも実績があり市場からも評価を得ていること、仮想化基盤のデータ保護に有効でありオンプレミスとクラウドの間を柔軟に行き来しやすいことなどが選定理由です。
「平時は本社のある広島で運用しますが、災害などでシステムが復旧困難になった場合、遠隔地のDRサイトで速やかに起動して事業を継続する必要があります。しかし既存のリストアの仕組みでは手作業が多く時間もかかり、その点も解消したいと考えていました」(岡原氏)
こうしてマツダでは、仮想化基盤上のアプリケーションはそのままにハードウェアを更新。VeeamやDRツール、DRサイトの構築により、遠隔地バックアップ&リストアの体制を整えるほか、長期的なデータ保護を目的としたCRとしてクラウドバックアップの仕組みを併用しています。
このように、キンドリルの提案によってマツダのシステムに合うように複数のツールやITインフラを組み合わせながらコスト最適化を図りつつ、事前に想定していた期限内でレジリエンス強化を進めることができました。
「キンドリルの支援によって、クラウドの知見が必須であるCRが半年もかからず、最短で立ち上げられたと思います。いち早く現在のマツダのDRを理解した構成を実現してくださいました。また、プロジェクト支援を受けることで同時並行でプロジェクトを進めることができるようになったため、プロジェクト数で表現するなら、インフラシステム部のメンバーだけで行った場合の2倍、3倍を走らせられたのです」(助川氏)
今後は攻めのDXも加速していきます。また、自動車業界のみならず、産業界に対して、これまで以上に環境性能に配慮することが求められます。ステークホルダーへの情報開示も重要な責務であり、温室効果ガス削減に向けては、排出量を自社内だけでなくサプライチェーンの前後、購入した製品から販売した製品の廃棄まで把握しなければならなくなる見込みです。そうなれば当然、運用するシステムも増えることになるため、岡原氏は新たな取り組みに挑戦していきたいと語ります。
「ビジネスの要求に応えてシステムを追加しつづけるためには、効率的なライフサイクル管理が可能な状態にし、管理やバックアップで苦労することがないように、現在ある制約を取り払った新しいインフラを作りたいと考えています。また、ときにはシステムを捨てる活動も必要になってきます。それには技術面でのチャレンジも必要ですが、果敢に進んでいく覚悟です」
そして岡原氏は、その道のりにおいてもキンドリルの貢献に期待していると語ります。
「メインサイトが被災時、DRサイトに常に同じデータが保存されており、仮想化基盤とアプリケーションの双方に手を入れずにDRサイトで起動するという私たちが描いたDRサイトの構成は難易度が高いと想定されましたが、そこにキンドリルはチャレンジしてくれました。
それ以前から長く支えていただいて感謝していますし、これからも引き続き支援をお願いしたいと思っています。一方で、支援を受けるばかりでなく、キンドリルのみなさんからマツダと働きたいと思ってもらえるような、互いに高めあっていける関係でありたいと願っています」
私たちが描いたDRサイトの構成は、相談した誰もが不可能だと言いましたが、それをキンドリルは実現してくれました。キンドリルとは、互いに高めあっていける関係でありたいと願っています。