経営課題のレジリエンス強化

mazda on the road

必要な対策を1年以内に完了させる

CASE時代でのさらなる事業強化へ

マツダが挑むITインフラのモダナイズ

レジリエンス強化を加速するDRと仮想化基盤の刷新

世界初のロータリーエンジン量産化を実現したことで知られるマツダは、理想とするクルマづくりを実現するために、飽くなき挑戦によって独自のテクノロジーや開発手法を生み出してきました。そのDNAは、走りと低燃費を両立させた「SKYACTIV-TECHNOLOGY」や、生命感あふれるデザインを表現する「魂動デザイン」などからも見て取れます。

 

いま自動車産業はCASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)というトレンドによって概念が大きく変わり、「100年に一度の大変革期」と言われています。これを脅威だとする向きもありますが、一方でマツダは「人間中心」の開発哲学で「走る歓び」を徹底的に追求し創造するマツダの企業理念を世界中に広めるチャンスだとも捉えています。

 

この大きな変化の中ではIT部門が果たすべき役割も大きくなっているのだとマツダMDI&IT本部 インフラシステム部 部長 岡原 俊幸氏は語ります。

 

「CASEによってクルマはソフトウェア化していき、それによる新しい価値を提供するための“攻めのDX”の推進が期待されています。一方で、生産性を上げる“守りのDX”にも、しっかり取り組まなければなりません。お客様と直に接するプロダクトやサービスを支えるシステムと社内業務システムの間でシームレスな連携が求められる一方で、それぞれの目的や進化の時間軸が異なります。インフラシステム部は、これらを下支えするばかりでなく、全体を同じ方向へと引っ張っていく役割も果たさなければなりません」

ビジネスの持続可能性を高めるとともに価値創造に貢献するためには、システムが効率性・柔軟性・即応性を備えると同時に、安全・安心・安定に稼動する必要があります。そこでマツダでは、将来に向けてレガシーシステムのモダナイズを決断しました。MDI&IT本部 インフラシステム部 シニア・スペシャリスト 助川 裕一氏は当時の課題をこう振り返ります。

「通常のバックアップソフトウェアを用いた場合、データそのものの遠隔地保管には対応しているものの、マツダの考えるDRの基準である、遠隔地でIPやアプリケーションに手を加えることなく稼働させることの実現が困難でした。DRの観点では、管理サーバーのあるメインサイトも被災しているため、メインサイトにある管理用サーバーと同等の機能とデータを持つサーバーをDRサイトでも稼働させ続ける必要がありました。この要求に対して、近年のシステムの需要の高まりから、かつてのように計画的に停止してデータをコピーする時間を確保することは容易ではありません。運用で疲弊しないようなインフラ環境であることが求められており、データ保護や復元の対応力を確保・強化することが喫緊の経営課題の1つとなっていました。」

マツダでは、これまでサーバー層、ネットワーク層、ストレージ層からなる3層のVMware仮想化基盤を採用していました。しかし、今後を見据えると、特定のストレージ製品に依存しないITインフラを構成可能とできる、ストレージ領域にも仮想化基盤を拡大した仕組みへと刷新することを目指しました。

こうしてマツダでは、クラウド環境の併用や連携も意識しながら、ビジネスレジリエンシーを高めるためのモダナイズプロジェクトが始動。さらに2023年にかけて、ディザスタリカバリー(DR)とサイバーリカバリー(CR)の強化に取り組む計画を立てました。

DRの観点では、運用で疲弊しないようなインフラ環境であることが求められており、データ保護や復元の対応力を確保・強化することが喫緊の経営課題の1つとなっていました。

マツダ株式会社
MDI & IT本部 インフラシステム部  シニア・スペシャリスト 助川 裕一氏
mazda headquarters

マルチベンダーのプロジェクト運営にプロフェッショナルの力を借りる

仮想化基盤の大規模な刷新ゆえに、プロジェクトの成否に強く影響するのがプロジェクト全体のマネジメントです。本プロジェクトではサーバー層だけでも国内2社のSIerが関わっており、1社がハードウェアなどの調達と構築、もう1社が運用を担う体制を組みました。その他にもネットワークなどの複数ベンダーが参画することになります。

 

もちろんマツダの責任でPMOを組織して推進することが重要ですが、既存業務と並行して進めるにはインフラシステム部の人的リソースが十分ではありませんでした。そこでPMOの一員として支援できるパートナーを外部に求めたとMDI&IT本部 インフラシステム部 シニア・スペシャリスト 光宗 徹氏は説明します。

 

「仮想化基盤構築はマルチベンダー体制にせざるを得ません。複数のベンダーを束ねてプロジェクトを進めるには、私たちの役割を補佐できるパートナーが欠かせませんでした。そうした中で、四半世紀にわたるマツダでの実績として信頼があり、マルチベンダーのプロジェクト経験が豊富かつ、特定の製品の販売を生業としない真のベンダーフリーであるキンドリルに支援を依頼しました」

 

そしてプロジェクトを振り返ると、キンドリルの振る舞いは期待以上のものだったといいます。

 

「経営層から求められていたスピードを重視したため、私たちが事前に想定しきれなかった課題が途中で顕在化することもありましたが、キンドリルには対処するべき課題を随時管理しながらサポートしてもらったおかげでプロジェクトをうまく進めることができました」(光宗氏)

特定の製品の販売を生業としない真のベンダーフリーであるキンドリルに支援を依頼しました。私たちが事前に想定しきれなかった課題も管理しながらサポートもらえたおかげでプロジェクトをうまく進めることができました。

マツダ株式会社
MDI & IT本部 インフラシステム部 シニア・スペシャリスト 光宗 徹 氏
meeting with japanese coworkers

バックアップ製品導入とDRサイト構築を的確にサポートできるパートナーが必要

サーバー移行に続くDRおよびCRの強化では、DR環境を増築し、CRの一環として安定稼動するアプリケーションのバックアップをクラウドに隔離しました。また、新しい環境に対応するデータバックアップとレプリケーションおよびリストア体制を整備するため、
Veeam Software社製品を導入しました。グローバルでも実績があり市場からも評価を得ていること、仮想化基盤のデータ保護に有効でありオンプレミスとクラウドの間を柔軟に行き来しやすいことなどが選定理由です。

 

「平時は本社のある広島で運用しますが、災害などでシステムが復旧困難になった場合、遠隔地のDRサイトで速やかに起動して事業を継続する必要があります。しかし既存のリストアの仕組みでは手作業が多く時間もかかり、その点も解消したいと考えていました」(岡原氏)

マツダとしては、Veeam製品はもちろん上述した構成のシステム構築は初めての取り組みであり、キンドリルの支援が欠かせませんでした。キンドリルは、サーバーサイジングやネットワーク帯域制御、バックアップの方式、バックアップの世代、イミュータブル(変更不可能)ストレージなど、さまざまな機能を整理・確認したうえで導入作業を遂行。遠隔地保管やオンプレ、クラウド間でのワークロードの移動がマツダの環境で問題なくできることを確認し、最終的にマツダの要件を満たすシステムが完成しました。

 

「Veeamは海外製品ですので導入前は少なからず懸念点がありました。一般論として海外製品は日本にエンジニアが少ないなどサポートに不安があり、本国のサポート窓口から適切な回答を引き出すのも容易ではない印象があるため、パートナーの存在は欠かせません。また、バックアップの対象である大規模なマツダの環境を知っていなければ安心して任せられません。その中で、実際の企業ごとのシステム構成に即した対応力があるキンドリルの存在は頼りになりますし、どのようにすれば動くのか具体的に助言してくれた唯一の存在でした」(光宗氏)

 

また、バックアップからのシステム立ち上げで手作業が多いという問題は、キンドリルが解決に導きました。従来は仮想マシンごとに立ち上げる操作を行い、進行状況を見ながら次の操作を続ける必要がありました。この作業は複雑化・属人化が進行しており経験者がいないと対応が難しいものでしたが、キンドリルが業務を標準化・自動化する仕組みを構築することで人に依存せずに実行できるようにしました。

 

「平時では止まったままのDRサイトを緊急時に立ち上げる作業は、不慣れな上に焦りも生まれやすいものです。そこで重要なのが、いざというときのために繰り返し訓練を実施することですが、手間がかかりすぎるため実施頻度を増やせないことを気にしていました。

 

またこの基盤を整備する際に、いままでの3層型、仮想ストレージを使った2層型の2つの仮想化基盤においてもDRを実装する必要があり、いままでのDRと新しいDRを同時に整備・発展させる必要がありました。この新しいDRツールの構築により、DRの実効性を高めることが期待できます」(岡原氏)

いち早く現在のマツダのDRを理解した構成を実現

こうしてマツダでは、仮想化基盤上のアプリケーションはそのままにハードウェアを更新。VeeamやDRツール、DRサイトの構築により、遠隔地バックアップ&リストアの体制を整えるほか、長期的なデータ保護を目的としたCRとしてクラウドバックアップの仕組みを併用しています。

このように、キンドリルの提案によってマツダのシステムに合うように複数のツールやITインフラを組み合わせながらコスト最適化を図りつつ、事前に想定していた期限内でレジリエンス強化を進めることができました。

「キンドリルの支援によって、クラウドの知見が必須であるCRが半年もかからず、最短で立ち上げられたと思います。いち早く現在のマツダのDRを理解した構成を実現してくださいました。また、プロジェクト支援を受けることで同時並行でプロジェクトを進めることができるようになったため、プロジェクト数で表現するなら、インフラシステム部のメンバーだけで行った場合の2倍、3倍を走らせられたのです」(助川氏)

今後は攻めのDXも加速していきます。また、自動車業界のみならず、産業界に対して、これまで以上に環境性能に配慮することが求められます。ステークホルダーへの情報開示も重要な責務であり、温室効果ガス削減に向けては、排出量を自社内だけでなくサプライチェーンの前後、購入した製品から販売した製品の廃棄まで把握しなければならなくなる見込みです。そうなれば当然、運用するシステムも増えることになるため、岡原氏は新たな取り組みに挑戦していきたいと語ります。

「ビジネスの要求に応えてシステムを追加しつづけるためには、効率的なライフサイクル管理が可能な状態にし、管理やバックアップで苦労することがないように、現在ある制約を取り払った新しいインフラを作りたいと考えています。また、ときにはシステムを捨てる活動も必要になってきます。それには技術面でのチャレンジも必要ですが、果敢に進んでいく覚悟です」

そして岡原氏は、その道のりにおいてもキンドリルの貢献に期待していると語ります。

「メインサイトが被災時、DRサイトに常に同じデータが保存されており、仮想化基盤とアプリケーションの双方に手を入れずにDRサイトで起動するという私たちが描いたDRサイトの構成は難易度が高いと想定されましたが、そこにキンドリルはチャレンジしてくれました。

それ以前から長く支えていただいて感謝していますし、これからも引き続き支援をお願いしたいと思っています。一方で、支援を受けるばかりでなく、キンドリルのみなさんからマツダと働きたいと思ってもらえるような、互いに高めあっていける関係でありたいと願っています」

私たちが描いたDRサイトの構成は、相談した誰もが不可能だと言いましたが、それをキンドリルは実現してくれました。キンドリルとは、互いに高めあっていける関係でありたいと願っています。

マツダ株式会社
MDI & IT本部 インフラシステム部 部長 岡原 俊幸 氏
selection steering

 

マツダ株式会社

 

1920年の創立以来、常に理想の商品づくりを追求し、現在ではクルマを単なる移動手段ではなく、所有し、共に走り、共に過ごすことで得られる「走る歓び」と「人間中心」をコンセプトとするクルマづくりにこだわっています。さらに、カーボンニュートラルの実現、事故のない安全・安心・自由な移動が叶う社会を目指し、さらなる価値創出の取り組みを行っています。

Meet the team

岡原 俊幸 氏

岡原 俊幸 氏

マツダ株式会社
MDI & IT本部 インフラシステム部 部長
助川 ○○ 氏

助川 裕一 氏

マツダ株式会社
MDI & IT本部 インフラシステム部 シニア・スペシャリスト
光宗 徹 氏

光宗 徹 氏

マツダ株式会社
MDI & IT本部 インフラシステム部 シニア・スペシャリスト
中川 千紗都

中川 千紗都

キンドリルジャパン
インフラスペシャリスト
池田 能将

池田 能将

キンドリルジャパン
インフラスペシャリスト

この事例は2024年5月のインタビューをもとに構成しました。

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