ものごとに潜む一瞬の真実を捉えたい

止められないシステムを維持しながら

ゼロベースで作った新会社のシステム

シンプルかつ最先端な
クラウドベースのIT環境で
独立した新会社の事業を支える土台を
築く

i-PROが実現した迅速なシステム構築とインフラ移行

i-PROは、パナソニックのセキュリティシステム事業部を母体として独立しました。 60年以上をかけて培ってきた技術革新と品質追求によって生み出されたコア技術を駆使し、ものごとに潜む一瞬の真実を捉えるソリューションを提供します。世界に安心・安全を届ける画像センシング事業のリーディングカンパニーです。

パナソニックの一事業部が独立することから、同社は独立に伴い人事や経理、営業、情報システムなどの組織を新たに作らなければなりませんでした。その中で情報システム部門の立ち上げについて、同社Chief Information Officer(CIO)の志賀亜矢子氏は次のように振り返ります。

「テクノロジーを活用してビジネスプロセスを継続的に進化させていくという想いを込めて、『ビジネスプロセステクノロジー』という部門を設置しました。基幹システムやインフラの構築と運用、情報セキュリティ、データの利活用、お客様向けサービスを含むデジタルプラットフォームを築き、会社全体のトランスフォーメーションを推し進めることをミッションとしています」

独立後の当面はパナソニックのシステムやインフラを継続利用できるものの、2022年9月末までに自社独自のシステムへと刷新しなければなりませんでした。移行作業中も事業は継続するため、稼働中のシステムの中断は最小限に留める必要があります。その規模と複雑さから、プロジェクト全体を通した難易度は非常に高いと言えます。

1つの事業部が独立する形であったため、元の組織には本社機能がありません。IT部門など“部門を作る”ところから始まり、システムの観点では2年で自前のシステムを構築する必要がありました。 

i-PRO株式会社 ビジネスプロセステクノロジー Chief Information Officer 志賀 亜矢子氏
Rush hour traffic zips through an intersection in the Gangnam district of Seoul, South Korea.

クラウドサービス導入や
業務をパッケージに合わせる
アプローチで短期導入を目指す

こうしてシステム構築に乗り出したi-PROは、「Fit to Standard」と「Shift to Digital」という2つの方針を定めてプロジェクトを進めることになりました。
 

「2020年半ばまでに構想策定を行い、その後の約1年半で多数のシステム構築と移行を実施しなければなりません。各拠点の業務に合わせている余裕はないため、クラウドサービスを前提に業界標準/グローバル標準のパッケージを採用し、その業務プロセスに全拠点の業務を極力合わせることにしました。これにより各拠点のシステムに散在していたデータが一元化され、会社の成長を支えるデータ基盤も構築できます」(志賀氏)

 

しかし、最短でシステムを移行するための方針を定めたものの、それを実現できる体制が整っているわけではありませんでした。志賀氏が着任した2020年4月時点では数名の体制で、いちから組織を立ち上げなければならず、外部の専門家からの支援が必要不可欠でした。

 

さらに同社にはさらなる困難が待ち受けていました。ビジネスプロセステクノロジー ITインフラ&情報セキュリティ ディレクターの高宮尚志氏は、こう振り返ります。

 

「当初、最終期限の半年前である2022年4月の稼働開始を目指していました。ところが途中で新たな欧州拠点を設けることが決まったため、そのための環境を半年前の2021年10月までに構築しなければならなくなったのです」

Paris traffic with roadworks viewed from La Defense toward Arc De Triomphe, car vehicles, metro train rush hour

i-PROは、システム移行をスムーズに実現するには、既存システムを正確に理解し、安心して任せられる信頼できるパートナー企業が必要です。まさにその役割を担ったのがキンドリルです。 

キンドリルが20年近くパナソニックのインフラ運用を経験して得た勘所も今回のプロジェクトに活かされています。

Shot of two businessmen discussing something on a laptop in an office

「クラウドインフラ(IaaS)とネットワーク関連をパナソニックグループからの移行においてキンドリルは心強い存在でした。パナソニックグループのインフラ運用・保守を行っていたからです。」と ITインフラ&情報セキュリティ マネージャー の 岡田裕文氏は話します。

Glass-walled building reflecting trees. This is shoot with a composition to look up from a lower place.

事業規模や特性に見合うよう
システムと業務プロセスの抜本的な
簡素化を重視

パナソニックの巨大なシステムから離脱することで、限られた予算と時間の中で最適なシステムを考えることが一番の難題だったという同社。今回のプロジェクトにて目指したのはシンプルかつ最先端のシステムでした。

「i-PROは巨大なパナソニックグループのシステム構成を引き継ぐ事はできません。システム管理や業務プロセスがシンプルかつスリムになるように設計しました。新規構築ゆえに既存のものから変える難しさがない反面、業務の要不要の判断を下さなければなりませんが、キンドリルの提案をベースにスムーズに検討を進められた上に、本当に必要なシステムとプロセスが何かという気づきを得られました。」(高宮氏)

「シンプルかつ最先端の提案になるよう心がけました。セッションは入念に情報を準備したうえで臨み、決定すべき事項は、いくつか候補を選択肢として提示し、お客様に選んでもらうことによって、お客様に負担をかけずにスムーズに意思決定できるように進めていきました」 (キンドリル 岡本) 

システム管理や業務プロセスがシンプルになるように設計しつつ、新規構築に伴う業務の要不要の判断も行ってきました。システムは、以前と使い勝手が変わらないように配慮し、キンドリルからもそうした考えに沿った提案をいただけました。

i-PRO株式会社 ビジネスプロセステクノロジー ITインフラ&情報セキュリティ ディレクター 高宮 尚志 氏

管理者にとってわかりやすく

利用者にも利便性の高いシステムを

実現

キンドリルとともに進められたプロジェクトは、まず欧州拠点の稼働に合わせて2021年10月に第1弾(主に閉域網の構築)のリリースを迎えます。新しいネットワークでは、世界のどの拠点でも同じデータにアクセスができる共通の基盤を採用しました。 続いて2022年4月に第2弾として、ハードウェアの一部をパナソニックに残しながらも各種アプリケーションが稼働を開始し、8月にはITインフラの完全離脱を果たしました。

 

第2弾のタイミングでは、SAP S/4HANA、Salesforce、Workday、Microsoft 365といったSaaSなどの運用を開始しました。これらのアプリケーションの基盤は、インターフェースの共通化を行うことでデータの連携がしやすい環境になっています。 この段階では日本国内のパソコン約2000台のドメインをパナソニックからi-PROに切り替えることも含まれ煩雑な作業が発生しましたが、キンドリルによるドメインコントローラー登録の支援もあり、移行は重大な問題を起こすことなく期限内に完了しました。

 

その結果、i-PROのビジネスに必須の基盤が整ったのはもちろんのこと、ITインフラ管理者にとっての利益も生まれました。岡田氏が強調するのは、目指したとおりのシンプルなシステム構成と組織の実現です。

 

さらに高宮氏は、ユーザー目線での利点についてこう話を続けます。

 

「組織が大きいと問い合わせから回答まで時間がかかりますし、誰が運用しているかわかりません。i-PROになって組織が小さくなり、システムがシンプルになったため、ユーザーからは運用者が見えるようになり、レスポンスも早くなりました」(高宮氏)

i-PROではITインフラからアプリケーションまで私たちビジネスプロセステクノロジーという組織に全て集約されたため、管理するシステムの範囲は広がりましたが、管理者の目が行き届くわかりやすい仕組みになっています。

i-PRO株式会社  ビジネスプロセステクノロジー ITインフラ&情報セキュリティ マネージャー  岡田 裕文氏

構築後のITインフラは、現在キンドリルが24/365の運用を担当しています。本番稼働前から入念な運用設計や、現場の意思決定者へ慎重に確認を取りながら進めた構築作業なども、現在の安定運用につなげるために留意した点であると、プロジェクトに携わったキンドリルの川口は話します。

さまざまな場面でi-PROを支えるキンドリルに対して、高宮氏は改めてこう評価します。

「ITインフラの完全な本番稼働を予定通りのスケジュールで迎えられたのは、キンドリルの優秀なプロジェクトマネージャーによるサポートが大きな要因です。点数を付けるなら、ほぼ100点です。運用についても24時間365日の監視をキンドリルに依頼していますが、パナソニック時代から監視に携わっている方が引き続き担当し、我々の立場に立って目を光らせくれているので非常に助かっています」(高宮氏)

このように、短期間でITインフラ移行という当初の目標は達成したものの、道はさらに続いています。i-PROでは、今後も継続的にセキュリティ対策を見直して強化しつつ、事業を支えるさらに堅牢なITインフラを構築していく構えです。 

長年パナソニックグループのITインフラやシステム構築と運用を理解したキンドリルからのアドバイスは、本当に助かりました。

i-PRO株式会社 ビジネスプロセステクノロジー Chief Information Officer 志賀 亜矢子氏

i-PRO株式会社

i-PROは、セキュリティ監視、パブリックセーフティ、そして医療用イメージングの各分野に欠かせないセンシングソリューションの世界的なリーディングカンパニーです。パナソニックにおける60年以上にわたる数々のセンシング技術とイノベーションを継承し、2019年に設立されました。一瞬も見逃さない高度なセンシング技術とあらゆる環境に対応する信頼性の高いソリューションで、人々の命を守り救うプロフェッショナルをサポートし、より安心安全な社会の実現に貢献しています。

プロジェクトチーム

志賀 亜矢子氏

i-PRO株式会社 ビジネスプロセステクノロジー Chief Information Officer

高宮 尚志 氏

i-PRO株式会社 ビジネスプロセステクノロジー ITインフラ&情報セキュリティ ディレクター

岡田 裕文 氏

i-PRO株式会社 ビジネスプロセステクノロジー ITインフラ&情報セキュリティ マネージャー

川口 潤

キンドリルジャパン パナソニック事業部 パナソニックデリバリー

岡本 真司

キンドリルジャパン セクターデリバリー本部 西日本デリバリー

この事例は2023年4月のインタビューをもとに構成しました。

PDFをダウンロード