栃木県の南西部に位置する足利市は、緑豊かな山並みと渡良瀬川の清流に抱かれ、多くの歴史的遺産を擁する「歴史と文化のまち」として知られています。2021年に市制施行100周年の節目を迎えた同市は、翌2022年から「第8次足利市総合計画」のもと、持続可能な行財政運営の一環として先進的なデジタル技術を活用した行政事務の効率化を一層推進しています。
現在日本の地方自治体の多くが、将来の人口構造の変化に対応するために、持続可能な行財政基盤の構築に取り組んでいます。その中で、行政サービスをあるべき水準で実現しつつ、いかにコストを抑制できるかが大きなテーマとなっています。
さらに別の観点では、少子化や民間企業の待遇改善などを背景に、地方公務員の応募者減少が報じられていますが、地方自治体が持続的に行政サービスを提供するためには、将来にわたり優秀な人材を確保し続けなければなりません。
こうした背景から、足利市を含むさまざまな自治体にて業務体制やICT環境を見直す機運が高まっています。例えばAIやクラウドサービスといった最新技術の活用は、業務効率化によって単純作業を抑制し、よりやりがいのある業務に充てる時間を増加させたり、柔軟な働き方を実現したりすることが期待されています。
足利市は、他の地方自治体と同様に、LGWAN(総合行政ネットワーク)を利用するにあたりネットワークを三層に分離する、いわゆる「αモデル」のITシステム環境を構築しています。強固なセキュリティ要件を満たせる一方で、LGWAN端末からインターネットへの接続が制限されています。
足利市のICT環境は、情報系システムの多くはオンプレミスに構築されており、導入から年数が経過したことで運用コストが膨らんでいる上に、市庁舎に設置しているため被災した場合に停止するリスクがありました。そこで、クラウド型のオフィススイート製品をフル活用した業務体制を構築したいという思いがある一方、「αモデル」の中ではクラウドサービスへのアクセスが柔軟にできませんでした。
この仕組みにおいてクラウドサービスを安全に利用するためには、LGWAN端末とシステムをセキュアにインターネットに接続する新三層分離モデル(βモデル)に移行する必要がありますが、そのためにはネットワーク構成を刷新する必要がありました。
また、足利市では既存のコミュニケーションおよびオフィススイート製品のライセンス価格が上昇傾向にあることを課題としていたため、同等以上の機能性を担保しつつ価格を抑えられる製品への置き換えを模索していました。
上述した課題を踏まえ、足利市はキンドリルの支援のもとでGoogle Workspaceを導入することとなりました。三層分離モデルのシステム環境において、クラウドサービスであるGoogle Workspaceを採用するために、A10 Thunder CFWを合わせて導入することで、安全性を確保しつつ安全にGoogle Workspaceへアクセスできるようなネットワーク刷新も行いました。
キンドリルが支援にあたった今回の導入プロジェクトは、2023年11月から2024年2月までの4カ月間にわたり、まずはデジタル戦略課でのGoogle Workspaceの活用をスタート。現在では、職員約1,500名にアカウントを発行し、コミュニケーションツール(Google Chat、Google Meet)やオフィススイート(Googleドキュメント、Googleスプレッドシートなど)を活用して業務の利便性を向上させています。
ローカルブレイクアウトによって三層分離モデルの課題を克服したことで、プライベートでは当たり前となっているクラウドツールの利便性を享受できるようになりました