グローバル・サステナビリティ・オフィサー、フェイス・テイラー(Faith Taylor)
ここ数年、ネットゼロ目標を掲げる企業の数は大きく増えていますが、これらの企業が目標達成に向けて進んでいないことを示唆する報告も少なくありません。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が推奨しているように、世界の気温上昇を1.5℃以下に抑えるためには、企業がネットゼロ排出の達成を約束するだけでなく、科学的根拠に基づくネットゼロ計画を構築し、実行することが必要不可欠です。2021年11月のスタート以来、キンドリルは自信を持って目標を発表できるように、ネットゼロエミッションの2040年の長期目標および2030年の短期目標を策定するための広範な準備を行ってきました。そして、このたび、Science Based Targetsイニシアチブ(SBTi)に沿ってネットゼロエミッション目標を検証することについてご紹介します。SBTiは、気候科学に基づくネットゼロ目標の策定を支援するための、主要な科学的枠組みを立ち上げています。
このプロセスを通じて、キンドリルはネットゼロエミッション計画の構築と実行を成功させるための4つのステップを特定しました。
1. 温室効果ガス排出量のインベントリーを作成する。
ネットゼロの目標を設定するには、温室効果ガス(GHG)排出量を追跡・測定できるようにする必要があり、そのためにはGHGインベントリーやフットプリントのベースラインを構築する必要があります。GHGプロトコルは、スコープ1、2、3と呼ばれる直接・間接排出のGHG排出インベントリーの作成方法を決定するための業界標準です。まず、ビジネスモデルに応じてインベントリーに含めるべき範囲と境界を決定する必要があります。キンドリルでは、インベントリーマネジメントプラン(IMP)を用いて、グローバルアセスメントと包括的なサイトタイポロジーを作成し、私たちの拠点の排出量をまとめました。
2. データを収集し、第三者による検証を受ける。
この作業は、特に最初のうちは最も難しいステップとなります。データの情報源は、施設のエネルギー、従業員の移動、廃棄物、サプライチェーンなど多岐にわたるからです。GHG排出量データの収集と検証については、主に3つのアドバイスがあります。
- 従業員からプロセスデータを持つサードパーティベンダーまで、必要なデータの収集を支援する部門横断的なチームをつくる。
- 収集するデータのソース、タイミング、正確性を評価して、内容に盛り込む。
- 80/20の法則について考える。20%のデータ収集ポイントが80%の排出量を占めているかもしれず、バリューチェーンにおけるトップクラスのサプライヤーが、排出量の最も大きな割合を占めている可能性がある。
データ収集を効率化するソフトウェアツールを活用しましょう。データやプロジェクトの収集を支援するソフトウェアによってビジネスの効率化が実現し、排出量の削減方法を上手に管理することができます。
ここで重要なサブステップは、収集した排出量データを第三者の専門家によって検証してもらうことです。それによって、GHGインベントリーのデータの整合性と正確性が確保され、報告の信頼性を向上させることができます。
3. 行動計画を策定し、Science Based Targetsイニシアチブ(SBTi)に沿って、ネットゼロエミッションの目標を設定する。
GHGデータがまとまり排出量計算が完了したら、次はデータを科学的に検証し、自社の目標やゴールを決定する必要があります。私たちがSBTiの利用をお勧めするのは、科学的根拠をもとに、第三者による検証を経た削減目標の概要を示してくれるからです。ここでは、ネットゼロ行動計画を策定する際に考慮すべきいくつかの質問を紹介します。
- 私たちの事業戦略はどのようなもので、サステナビリティ・ネット・ゼロの目標と一致させるためにはどうすればよいか。
- 目標を達成するためには、どのような排出削減活動を実施すればよいか。
- 目標達成のために必要なタイミングやリソースは何か。
Kyndrylでは、炭素削減の財務モデルを開発しました。このモデルは、目標やゴールを達成するために必要なトレードオフや戦略を理解するのに役立ちます。
データに基づくアクションプランを作成することで、ベースラインとターゲットを(SBTi)を通じて明確に報告できるようになり、投資家、お客様、規制当局が求めるネットゼロ目標達成に向けた戦略の進捗を測定することができます。
4. 行動計画を実行し、進捗状況を毎年、報告・評価する。
これは、ネットゼロエミッションの実現に向けた重要なステップです。アクションプランの実行なくして排出量を大幅に削減することは不可能であり、2040年までにネットゼロを実現するというキンドリルの目標も達成できません。
計画の実行方法は、企業や業界によって異なるかもしれません。エネルギー効率化プロジェクト、再生可能エネルギーへの投資、サプライヤーや顧客との関わり、バリューチェーン全体でのイノベーションなどともに、キンドリルの行動計画には従業員、サプライヤー、顧客、外部パートナーに対する教育も含まれており、目標達成のためにどのような支援ができるかを理解してもらう必要があります。
行動計画を実行する際には、規制当局、顧客、投資家の要求に応えて「方法」を示すことが重要です。現在、フレームワークや継続的なアンケートの形でサステナビリティの進捗状況を公開するという、透明性が求められています。このような要求に応えるために、私たちは企業が気候リスクマネジメントを開示できる気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)と、企業の環境パフォーマンス全体に焦点を当てたカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)気候報告書という、2つの主要なサステナビリティ報告書を推奨しています。
キンドリルのネットゼロ目標やサステナビリティへの取り組みについては、気候変動対策ページをご覧ください。また、今年末には初のESGレポートが発行される予定ですので、ご期待ください。