「なめらかな社会」を実現するために

プロジェクト1000名規模

躍進に向けたITの刷新

基幹システムの全面的な再構築で

業務とIT運用の双方を標準化

巨大プロジェクトを遂行し部分最適から脱却したNTN

自動車、鉄道、飛行機といった乗り物やあらゆる産業機械に欠かすことのできないベアリングやドライブシャフトで世界有数のシェアを持つリーディングカンパニーのNTN。エネルギーロス削減に貢献する高精度ベアリング、電気自動車や風力発電向け商品などの供給を通して、社会課題の解決に貢献する企業としてグローバル市場での存在感が一層高まっています。

2018年に創業100周年を迎えましたが、引き続き国際社会に貢献しながら次の100年に向けて持続的に成長するためには、たゆまぬ経営努力が欠かせません。その1つが、生産改革をはじめとする業務全般の改革であり、部分最適から全体最適を目指して取り組みを進めてきました。

2015年には、国内のサプライチェーンに関わる販売/生産/調達/物流の情報を一気通貫で把握するための取り組みとして、基幹システムの刷新プロジェクトが始まりました。同社の情報システムの歴史を、ICT戦略部 部長 北里 健二氏はこう説明します。

「1980年代からはホストコンピュータ上に各種基幹システムを構築しました。その後、2000年代からクライアントサーバー型のシステムが主流になる中、各部門が独自にシステム開発を行うようになりました」

こうした同社の取り組みは、システムのダウンサイジングという当時のITのトレンドに沿った動きでしたが、システムは乱立し、サイロ化してデータ活用も思うようにできませんでした。運用・保守の非効率さや、基幹システムのブラックボックス化も課題となっていました。

またシステムを利用する立場の社員にとっては、拠点ごとに仕事の仕方が異なるような状態も発生していました。このような経緯を踏まえて始動したのが先述の2015年からのプロジェクトです。

「基幹システム自体を刷新しなければ、新しい技術を活用した革新が進められなくなると考え、メインフレームの基幹システムをすべて作り替えることにしたのです。共通のERPパッケージの導入によって、10社以上の国内グループ企業での業務標準化を目指し、そして国内の関係会社すべてのデータを1つの場所に蓄積し活用できるようにするのです」(北里氏)

この取り組みは、当然ながらアプリケーション構築だけでなく、ITインフラやシステム運用のあり方を含めた大規模な刷新を伴うものであり、その観点からも大きな期待がかかりました。ICT戦略部 セキュリティグループ 主査 赤坂隆史氏は次のように述べます。

「ITインフラやシステムの運用も標準化して統一することで、運用効率向上とコスト削減を実現できます。また、例えばプログラムの移送などにおいて品質担保に寄与できます。モダナイゼーション以前にも、もちろんルールにのっとった運用を行っていましたが、どうしても人に依存しやすかったため、ルールだけでなくシステムを統一することによる強制力のある仕組みの実現を期待しました」

基幹システム自体を刷新しなければ、新しい技術を活用した革新が進められなくなると考え、メインフレームの基幹システムをすべて作り替えることにしたのです。

NTN株式会社 ICT戦略部 部長 北里 健二氏
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円滑なプロジェクト推進におけるITインフラの貢献

プロジェクトを円滑に進めるためには、アプリケーションに先行して環境を整えるために、インフラ・セキュリティグループの役割が重要です。当時のさまざまな困難や特に注意した点について、赤坂氏が振り返ります。
 

「まず重要なミッションだったのは安定稼働の実現です。旧基幹システムはブラックボックス化などの課題はありましたが、メインフレームであるがゆえに安定性の観点では非常に優れていました。一方で、新システムでは機器そのものの信頼性だけでなく、構成する機器が多くなるぶん障害ポイントが増えるため、どれだけ安定稼働を実現できるのか、そして障害発生時にいかに迅速に対処できるのかが大きなポイントでした」(赤坂氏)
 

また、各アプリケーションが順次スケジュールどおりに開発するためには、ITインフラ側としては、要件が明確ではない段階で開発環境・テスト環境を構築して提供する必要がありました。本稼働環境の構築も含めて、関係各所とのさまざまな調整、そして採用したSAPを中心としたERPパッケージ特有の導入の勘所が求められました。

ITインフラの構築では、関係各所とのさまざまな調整、そして採用したSAPを中心としたERPパッケージ特有の導入の勘所が求められました。

NTN株式会社 ICT戦略部 セキュリティグループ 主査  赤坂 隆史氏
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大規模刷新で避けられないマルチベンダーの難しさを懸念

そして広範にわたる領域を刷新する大規模な当プロジェクトでは、マルチベンダーならではの難しさが懸念されました。

インフラについてはゼロから作り上げていきましたので、まさに『刷新』という表現がぴったり当てはまるようなプロジェクトでした。基幹システム刷新といえども、インフラだけでなくアプリケーションの構築パートナーを含めた広範囲な領域を扱うプロジェクトとなるため、合計十数社におよぶマルチベンダーで足並みを揃える必要がありました。各社が自分たちの範囲で成果を出すだけでは不十分であり、領域をまたぐ連携の調整やタスクを見落とさないようにすることが重要でした」(赤坂氏)

このようなさまざまな懸念点を、伴走サポートによって払拭していったのはキンドリルでした。キンドリルは基幹システム再構築プロジェクトにおけるインフラ移行·構築の全体管理と推進、IT運用の実施と継続的な改善を支援し、ITインフラ刷新の対象領域はホスト、サーバー、ミドルウェア、ストレージ、ネットワークまで広範囲にわたる取り組み全体に及んでいます。

では、なぜNTNはキンドリルをパートナーに選んだのでしょうか。その理由として北里氏は、メインフレームのアウトソーシングを1995年に始めて以来、IBM時代を含めて20年間にわたりNTNシステム運用を支えてきた実績を評価したと明かします。

「アウトソーシングはメインフレームだけでなく、周辺の数百台のサーバーや、ネットワークも合わせて安定的に運用できていました。その中でキンドリルに対しては、対応のスピード感や、悩んで相談したときの頼りになる回答に満足していました。もちろん、より良い選択肢がないかを常に探していましたし、今回のプロジェクト開始にあたっては複数のパートナー候補を挙げて検討しましたが、総合的に見て、キンドリルとなら最も効率良く導入を進められると判断したのです」(北里氏)

また、赤坂氏はRFPに対するキンドリルの回答について、「実現できるのかが重要な要素です。それに対してキンドリルの提案は、当社のネットワークなど周辺インフラを踏まえたパフォーマンスや耐障害性までを考慮した全体設計、さらにスケジュールまで具体的かつ確度が高いと感じられる内容でした」と話します。

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大規模なシステムに対する運用プロセスの統一化・標準化を実現

2015年から実施した基幹システムの再構築は、2016年に本社にてERPパッケージの財務会計モジュール導入を皮切りに、人事・給与、技術の領域の新システムに続き、SCM領域では2020年8月から販売・物流・需給調整・在庫管理などを順次展開し、さらに各工場の生産・調達・工程・仕掛・原価領域の導入も進められました。各導入は安全に構築・移行することを重視して段階的に行っています。

これらのアプリケーションは一部を除き、キンドリルが運営する複数のデータセンター内で管理する約500台のサーバー上で稼働しています。サーバー構築の段階から統一された設計がなされていることから、システムの集中管理と運用業務プロセスの統一化・標準化を実現。自動化を適用できる領域が増え、業務効率化に成功しています。

「具体的にはServiceNowのIT Service Managementなどを使いながら、IT統制にも耐えられる運用の標準化を実現しました。インシデント管理、変更管理、リリース管理など各種プロセスにおいて承認手順が定義され、しっかりとした運用プロセスが築けたのは1つ成果です」と赤坂氏は語ります。

バックアップについては、ホストコンピュータで運用していた頃はテープ装置で行って遠隔地に保管していましたが、現在ではデータセンター間でレプリケーションを実施できるようになりました。さらに、10年近くを要する大規模プロジェクトの期間中には、世の中でクラウド利用が進んだことを受けて、NTNでもバックアップ先としてクラウドを構成に追加しました。セキュリティ管理の面では、キンドリルのSOC(Security Operation Center)サービスを活用して安全性も担保しています。

新システムの展開も完了が近づき、システムも非常に安定的に運用できていることから、「今後はキンドリルとともに、更なる運用の高度化と効率化に取り組み、トータルとしてのコスト低減を進めたい」と北里氏は語ります。

ITインフラにおけるマルチベンダーの調整役としての機能を評価

赤坂氏は、懸念点を取り除きながら推進をサポートしたキンドリルの振る舞いを、こう振り返ります。

「まず、ITインフラにおけるプロジェクト推進については、キンドリルが各社をまたぐ領域へ意識を向けて運営を支援してくれたことで非常に助けられました。また、キンドリルはERPパッケージにおけるインフラ導入の知見を積み重ねており、特に同製品のミドルウェア領域で力を発揮していただきました。アプリ側からは、設計の見直しやインフラ側からの提案を必要とするような相談が次々と寄せられましたが、まるで聖徳太子のように聞き分けて対応を進めてもらえました」(赤坂氏)

さらに、北里氏もマルチベンダーの調整役としての働きを評価します。

「かなりの経験を積んだ方がチームに入ってくださいました。そして、その知見をNTN側にだけ提供するのではなく、他のベンダーにも指導を行うなど、会社間をまたいで推進する様子からは、本当に親身になって取り組んでくれていることを実感しました」(北里氏)

今後について北里氏は「当初のゴールが見えてきましたが、今後も世の中の急速な変化に遅れずについていく必要があります。キンドリルのアドバイスや提案を受けながら、システムのさらなる安定や進化を目指します。直近の課題であるクラウドリフトの支援も引き続き期待しています」と話します。

今後も世の中の速い動きに遅れずについていく必要があります。キンドリルのアドバイスや提案を受けながら、さらにシステムの安定や進化を目指します。

NTN株式会社 ICT戦略部 部長  北里 健二氏
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NTN株式会社 

NTNは、1918年に創業し、エネルギーロスの極小化に貢献する部品であるボールベアリング(軸受)の研究製作を開始しました。その後の100年でベアリングや自動車向けドライブシャフトなどの研究・開発、生産、販売を行う精密機器メーカーとして発展し、世界有数のシェアを持つリーディングカンパニーとなりました。人と自然が調和し、人々が安心して豊かに暮らせる、持続可能な「なめらかな社会」の実現を目指し、次の100年に向けて歩んでいます。

プロジェクトチーム

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北里 健二 氏

NTN株式会社
ICT戦略部 部長
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赤坂 隆史 氏

NTN株式会社
ICT戦略部 セキュリティグループ 主査
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千葉 喜代司

キンドリルジャパン
セクターデリバリー本部 デリバリーパートナー
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瀧澤 明弘

キンドリルジャパン 
製造事業本部 カスタマーパートナー 

この事例は2024年2月のインタビューをもとに構成しました。

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映像著作物出典:NTN株式会社公式YouTubeチャンネル